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2009.07.26
メディア掲載

〔読売新聞 日曜版 2面〕 不屈のひみつ~悩まず「役に立つ仕事」追求

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〔読売新聞 日曜版〕 不屈のひみつ~悩まず「役に立つ仕事」追求
2009年7月26日発行/2面

 地方には特産の食品があるのに、業者は都会まで営業に行けない。都会では地方の特産食品が人気だが、都会の小売業者には思うように情報が入らない。インターネット上に食品の売り手企業と買い手企業が直接取引できる「市場」をつくれば、喜んでもらえる――。

 「誰もやっていなくて、世の中の役に立つ仕事がしたい」と考えていた村上は、1997年、知り合いの百貨店幹部や、地元・山口で食品を販売する先輩の話を聞くうちにそう思いついた。

 パソコンはほとんど使ったことがなかった。だが、翌98年にはインフォマートを設立し、そして生命保険に入った。

 「俺の最後のビジネス。もし失敗したら、死んで金を返そう」

服販売店で失敗

 野球少年で、高校は名門・宇部商業に進み、3年生の春には二塁手として甲子園に出場、夏は甲子園ベスト8に入った。

 卒業後に就職した山口県信用農業協同組合連合会は「もっとほかに自分にできることがあるのではないか」と3年で退職、仲間4人とブランド服のディスカウント店を開業した。当時は「ニコル」などのDCブランドの服が流行。知り合いから「安く手に入る」と教えられた仕入れ先から山のような段ボール箱が届いた。開けてみると服はいっぱい入っていたが、DCブランドの服は1箱に1着ぐらいしかなかった。仕入れた服を店に並べたものの、売れるのは数少ないブランド服だけ。結局、1回の仕入れで廃業し、4人で1600万円の借金が残った。

 建築・不動産会社の営業などをして、約6年かかって借金を返済。ビルの外壁洗浄を行う代理店を30歳の時に福岡市に設立、順調に業績を伸ばした。

 だが、金銭に困らなくなると、別の思いがこみ上げてきた。「誰もやっていなくて、世の中の役に立つ仕事がしたい」

 村上が設立した「インフォマート」は、全国の食品の売り手企業と買い手企業がインターネット上で商談をしたり、日常的に食材を発注したりできる企業間電子商取引サイト「フーズインフォマート」を運営する。業者が安い食材を見つけられたり、遠方との取引が楽になったりしたことが評判になり、今や利用企業数は1万8000社を超え、フーズインフォマートでの食品の流通取引額は昨年4200億円に上がった。

 幾多の困難があったように見えるが、村上は「どんな時でも悩まないし、眠れないこともなかった」と涼しげに話す。

 夢は全国の飲食店や小売店のすべてに、インフォマートのサービスを利用してもらうこと。

 「まだ始まったばかり。事業を続けて世の中の役に立ちたい」