〔読売新聞 38面:社会〕 [食ショック] 期限切れ間近 アウトレットで
〔読売新聞〕 [食ショック] 期限切れ間近 アウトレットで
2008年6月21日発行/38面:社会
山形、宮城両県に59店舗を構えるスーパー・ヤマザワは、加工食品の賞味期限が残り1か月程度になると、売り場から撤去する。「期限切れ食品を誤って棚に置いてしまう事態を防ぐため、余裕をもって管理している」と担当者。撤去した商品は、「処分品セール」に回し、それでも売れなければ廃棄するが、こうしたやり方はスーパーでは珍しいことではない。
業界には「3分の1ルール」という暗黙の取り決めもある。賞味期限までの期間を3分の1過ぎた食品は、問屋から仕入れないというもので、「大手スーパー主導で、10年ほど前から幅広く行われるようになった」(大手食品メーカー)。あるスーパーの担当者は「契約書を交わしたわけではないが、問屋との間での『信義則』となっている」と打ち明ける。
この「3分の1ルール」について、大手水産会社の担当者は、「賞味期限10日の商品では、作ってから問屋を経てスーパーに届けるまでに実質3日間しかない。これでは、在庫を十分に持てず、小口生産によるコストがかさむ」と苦労を語る。「雪や台風で配送が遅れ、引き取ってもらえないこともある」と話す関係者もいる。
消費者の「鮮度信仰」を背景に、流通現場の「日付管理」は厳しくなる一方だ。そこではじかれた食品の「脱出口」となっているのが、アウトレットと呼ばれる店だ。
食品の電子商取引システム会社・インフォマート(東京都港区)がネット上に開いている「アウトレットマート」もその1つ。食品メーカー約100社が賞味期限切れ間近の商品を通常の半値以下など大幅に安く売り、これらを飲食業者ら170社が買う。「食品の値上がりが相次いだ昨年末から取引が増えている」とインフォマートの川瀬一・EMP事業部長は話す。
同様のネットサービスを消費者相手に行なう「特売屋にじべっかい」(千葉県松戸市)では、会員が約1万人に達した。賞味期限が間近だと明示しているため、クレームは来ないという。
茶葉を扱うルピシア(東京都渋谷区)もアウトレットとは銘打っていないものの、賞味期限切れの近づいた自社製品を割安販売するための店を今年4月、東京・代官山にオープンさせた。それまでは、賞味期限の3分の2を「販売期限」と定め、販売期限が過ぎた茶葉を年間1500キロ廃棄してきたが、「品質は問題ないのに、もったいない」という声が社内から上がった。趣旨に賛同した食品メーカー30社も、この店で商品を販売している。
神戸大学の石川雅紀教授(環境経済学)は、学内の生協で、賞味期限が迫った食品を学生向けに安く販売するシステムを検討中だ。
「食品の大量廃棄の実態が社会に知れ渡れば、企業の対応も変わらざるを得なくなる。消費者の側の意識改革も必要だ」と話す。「鮮度信仰」を打破する取り組みは少しずつ広がっている。
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