〔月刊食堂 5月号〕 インターネット食材購買のいま
〔月刊食堂 5月号〕 インターネット食材購買のいま 2008年4月19日発行
IT技術の進化と、パソコンの普及により、利用者が拡大しているインターネット購買。それには、多数の生産者や卸、問屋が乗り入れたネット上の食品市場の活用と、卸や問屋が運営するWebサイトへのアクセスといった2つの手段がある。当企画では前者に注目し、その最新動向をレポートする。
(株)インフォマートが運営する食材ネット市場「フーズインフォマート」の買い手社数は、2005年に2000社だったのが、いまでは、2652社(07年12月現在)に増加。また、(株)Mマートの業務用食材卸市場「Mマート」もメールマガジンの登録数では、05年に3万6000社だったのが、現在は5万3000社まで伸長。インターネット購買に対する関心は、年々確実に高まってきているようだ。
Mマートの代表取締役、村橋孝嶺氏は、「とりわけ、地方に見られる現象ですが、飲食店の店数が減少している地域では、効率が悪いといった理由から問屋が配達を放棄する傾向がある。そんな地域で取り残された飲食店の利用が増えています。」と語る。
インターネットを活用した食品市場の最大の魅力は、多彩な品揃え。買い手の増加により、ビジネスチャンスを見出そうと食品市場に乗り入れる売り手は後を絶たず、各社とも品揃えの魅力をさらに高めている。フーズインフォマートを例にとると、商品カタログに載るアイテムは12万点という膨大な数に膨れ上がっている。最近の買い手の傾向についてインフォマートの経営企画部部長、櫻井サチコ氏は「安全・安心ニーズへの対応や、健康づくりへの貢献といった概念を持って食材探しをする企業が増えています」と語る。
一方、前出の村橋氏は、「店舗でレベルの高い加工技術を必要とせず、なおかつ在庫管理しやすい調理済み商品が伸びている」と言い、「腕のある社員を減らしアルバイトやパートを中心に店舗の人員を組織する、昨今の外食産業のトレンドによるもの」と分析する。
売り手の増加は、品揃えの充実以外にも買い手にメリットを生んでいる。それは売り手間における競争原理の働きによる、価格とサービスの変化だ。
価格面では、いいものを安く売るという流れが生まれてきている。
サービス面では、販売量に対する柔軟な対応が特筆すべき点だ。これまで、サイトや商品によっては注文の最低ロットが大きく、個人店にとってはそれがネックとなり、利用を見送るケースもあった。しかしながら、現在では小ロットに対応する売り手が増えている。これには、個人店のケアという発送に加え、「単一チェーンの展開から多業態での多店化」という外食産業のトレンドへの対策といった考えもある。
総合型と専門型を使い分ける
いまやネット上の食品市場は無数に存在する。いずれも個々に特徴があるが、インフォマートやMマートのような総合型食品市場と、特定のカテゴリーに強い専門型食品市場の大きく2つのタイプに分類することができる。
後者の例として挙げられるのが、(株)ZEN風土の「ZEN風土」とオイシックス(株)の「Oisix」。ZEN風土は鮮魚に特化した品揃えで、産地直送を売りとするサイト。現在、都内の高級レストランを中心に約80店で利用されている。Oisixは野菜の産地開拓に定評がある。最近では、沖縄の「にが菜」や東北の「ひろっこ」などの伝統野菜の販売も開始。有機・特別栽培の商品を中心とし、約1000軒の生産者の栽培記録を管理するなど、安全・安心を訴求している点も売りだ。
もっとも、Oisixは業務用ではなく一般向けのサイト。それゆえ、大量仕入れが必要とされるチェーンには不向きだが、小ロットを望む個人店には、十分に利用価値があるだろう。
ひとつの窓口から多様な食材を探したいのであれば総合型、特定の食材を掘り下げるなら専門型、また店数によるロットの大小など、自店のニーズに適したサイトを選ぶことが効果的な活用の第一歩といえそうだ。
<フーズインフォマート>
買い手自らが商品を探す従来の利用方法に加え、買い手情報を登録しておき、売り手からの商品提案を募るといった使い方も可能。また受発注を効率化するシステムや、商品規格書をデータベース化し、取引先とデータ交換できるシステムなども用意し、多角的に飲食店をサポートする。会費制(買い手として参加する場合、月額5250円)。
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