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消費税の仕入税額控除とは?控除の要件や仕組み

消費者として消費税を支払う際、たとえば100円の商品を買った場合10円の消費税を支払います。つまり消費者は消費税の全額を支払っていますが、事業者になると消費税の支払い額は少し異なります。なぜなら多くの場合、商品の製造から販売に至るまでにいくつかの段階を経ているからです。 今回の主題である「仕入税額控除」は、この事業者が納付する消費税額の計算の際に大きく関連するもの。仕入税控除額の概要や要件、計算式はどういったものかなどについて、具体的にお伝えします。

消費税の仕入税額控除とは?控除の要件や仕組み

最終更新日:2021年02月24日

目次

仕入税額控除の概要と要件

仕入税額控除とは具体的にどういったものなのでしょう。製造者・販売者・消費者の三者が支払う消費税額を例に説明します。

・ 製造者は工場で製造された椅子を販売者に1万1,000円(消費税額1,000円)で販売する
・ 販売者は製造者から1万1,000円で購入した椅子を消費者に1万9,800円(消費税額1,800円)で販売する


この場合、製造者と販売者が税務署に納付する消費税は、次のとおりです。

・製造者 1,000円
・販売者 800円

販売者は、消費者から1,800円の消費税を受け取っていますが、その前に製造者に対し、1,000円の消費税を支払っているため、1,800円から1,000円を差し引いた800円が納付額になります。この差し引いた1,000円が仕入税額控除の金額です。

消費税は、通常の税金とは異なり、生産や流通といったそれぞれの段階で発生する税金となります。前段の例でも、販売者が消費者から受け取った1,800円をそのまま納付すると、製造者の1,000円と合わせ、2,800円の納付となり、実際の消費税額である1,800円を超えてしまうのです。

仕入税額控除はこういった二重課税を防ぐための制度。生産や流通の段階で発生した消費税を製造者・販売者がそれぞれ負担する仕組みになっているのです。

仕入税額控除の対象となる取引

仕入税額控除の対象となる取引は、消費税のかかる「課税仕入」です。具体的には次のようなものが挙げられます。

1. 商品などの棚卸資産の購入
2. 原材料等の購入
3. 機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入又は賃借
4. 広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払
5. 事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
6. 修繕費
7. 外注費

引用: No.6451 仕入税額控除の対象となるもの|国税庁

※ なお、給与支払いは課税仕入れではありませんが、加工賃や人材派遣料、警備、清掃などを外部に依頼している場合は消費税が課税されるため、課税仕入れとなります。

仕入税額控除の要件となる帳簿・請求書へ記載する事項

仕入税額控除の要件となる帳簿・請求書には何を記載するべきなのでしょうか。要件と記載事項のそれぞれをかんたんに説明します。

仕入税額控除の要件

仕入税額控除の適用を受けるのに必要な要件は、帳簿と請求書の保存です。保存期間は、閉鎖または受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日から7年間。ただし6年目と7年目は、帳簿か請求書、いずれかだけの保存でも問題ないとされています。

参照: No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた|国税庁

帳簿へ記載する事項

課税仕入れの場合、帳簿と請求書へ記載する事項は次のとおりです。

・帳簿

1. 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
2. 課税仕入れを行った年月日
3. 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(その課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)
4. 課税仕入れに係る支払対価の額(消費税額及び地方消費税額に相当する額を含みます。)

・請求書

1. 書類の作成者の氏名又は名称
2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
4. 課税資産の譲渡等の対価の額(税込価格)
5. 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

引用:No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項|国税庁

これは請求書等保存方式で必要な記載事項です。しかし2019年10月1日より軽減税率が適用されたため、2023年9月30日までの間は、上記に加え、区分記載請求書等保存方式として、帳簿の上記3(資産の内容)に「軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨」が追加されます。

また請求書の上記3(資産の内容)には「軽減対象資産の譲渡等である旨」、上記4(課税資産)に「税率ごとに合計した」が追加されるのです。

参照:区分記載請求書等保存方式|国税庁(PDF)(追加事項部分に関して)

仕入税額控除を割り出す3つの計算方法

仕入税額控除を割り出す方法は、「課税売上割合」によって3つあります。課税売上割合とは、企業の売上のなかで、消費税の課税取引に該当する売上の割合を示すものです。

一般的な小売業や製造業、卸売業などは取引のほとんどが課税取引のため割合が高くなり、逆に医療や学校、不動産など非課税取引の多い事業は課税売上割合が低くなります。課税売上割合の計算式は次のとおりです。

課税売上割合=(課税売上+免税売上※)÷(課税売上+非課税売上+免税売上)

※基本的に消費税は国内で消費されるものに対してかかるものですので、外国で消費されるものには課税されません。そのため販売が輸出取引に当たるものは、消費税が免除されます。これを免税売上と呼ぶのです。

参照:No.6551 輸出取引の免税|国税庁

これを踏まえたうえで、3つの計算方法を見ていきましょう(消費税額は一律10%とします)。

・全額控除

課税売上割合が95%以上、もしくは課税期間中の課税売上高が5億円以下の企業は、全額控除が利用できます。課税仕入れにかかった消費税のすべてを控除できる計算方法です。

例:課税売上 3,300万円(消費税300万円)
仕入額 1,360万円(消費税120万円)
オフィス光熱費 220万円(消費税20万円)

仕入額とオフィス光熱費にかかる消費税額が140万円(120万円+20万円)で、これが仕入税額として控除されます。そのため税務署に納付するのは、売上にかかった消費税額300万円から140万円を差し引いた160万円です。

・個別対応方式

個別対応方式とは、課税仕入れを個別に見た内容から次の3つに分け、それぞれで仕入税額控除の金額を計算する方法です。

1. 課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの(全額控除されます)
2. 非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの(控除されません)
3. 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの(課税売上割合の分だけ控除されます)

参照:No.6401 仕入控除税額の計算方法|国税庁

例:課税売上 3,300万円(消費税300万円)
仕入額 1,360万円(消費税120万円)
オフィス光熱費 220万円(消費税20万円)

※光熱費は課税売上・非課税売上に共通する仕入のため、課税売上割合である90%を仕入税額控除として計算できます。

土地の売却手数料 330万円(消費税30万円)※非課税売上
課税売上割合 90%

仕入額・オフィス光熱費にかかる消費税額は138万円(120万円+(20万円×90%))で、これが仕入税額として控除されるのです。土地の売却手数料は非課税売上のため、仕入税額控除対象外となります。そのため税務署に納付するのは、売上にかかった消費税額300万円から138万円を差し引いた162万円です。

・一括比例配分方式

一括比例配分方式は、「仕入にかかったすべての消費税×課税売上割合」で計算します。

例:課税売上 3,300万円(消費税300万円)
仕入額 1,360万円(消費税120万円)
オフィス光熱費 220万円(消費税20万円)
土地の売却手数料 330万円(消費税30万円)
課税売上割合 90%

仕入額とオフィス光熱費、土地の売却代にかかる消費税額が170万円(120万円+20万円+30万円)で、これに課税売上割合の90%を掛けた153万円が仕入税額として控除されます。そのため税務署に納付するのは、売上にかかった消費税額300万円から153万円を差し引いた147万円です。

このように課税売上割合が高ければ、一括比例配分方式のほうが納税額を抑えられます。なお一括比例配分方式を選択した場合、2年間以上継続して適用しなくてはなりません。

簡易課税制度とは?

仕入税額控除を計算する方法は、前述した3つの方法が基本です。しかしそれ以外に簡易課税制度という特例があります。仕入税額を考慮せず、売上高の税額にみなし仕入れ率を掛け、仕入税額を計算する方式です。

ただしこの制度が使えるのは、課税期間の前々年または前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の場合、かつ「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出している場合のみ。またみなし仕入れ率は、小売業であれば80%、不動産業であれば40%など、事業によって異なります。

経理担当者は仕入税額控除をしっかりと理解し、自社にとって適切な方法の選択を

仕入税額控除を詳しく理解していないと、消費税の正しい納付額を計算できなくなります。また計算方法によっても納税額が変わるのです。そのため経理担当者は、「自社にもっとも合う計算方法」を理解しておく必要があるでしょう。

2023年にはインボイス制度が適用され、仕入税額控除の対象が変わります。それも含めてしっかりと理解し、そのうえで、経理業務を進めていきましょう。

参照:
 No.6451 仕入税額控除の対象となるもの|国税庁
区分記載請求書等保存方式|国税庁(PDF)
No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた|国税庁
No.6551 輸出取引の免税|国税庁

※本記事は更新日時点の情報に基づいています。法改正などにより情報が変更されている可能性があります。

監修者プロフィール

『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部

この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。

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