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なかなか進まないデジタルトランスフォーメーション(DX)の課題と解決策

2020年9月24日、一般社団法人日本能率協会は「DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組み状況」(注1)を公表しました。同調査によると、全国主要企業約530社中、5割を超える企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進もしくは検討に着手済みとなっています。 ただし、大企業にしぼると割合は83.2%と高い一方で、中小企業では34.9%と低くなり、企業規模によって大きなばらつきが見られます。 とくに中小企業で進んでいない、デジタルトランスフォーメーション(DX)の現状はどうなっているのでしょうか。経理部門を中心に、課題や解決策をお伝えします。

なかなか進まないデジタルトランスフォーメーション(DX)の課題と解決策

最終更新日:2020年12月02日

目次


デジタルトランスフォーメーション(DX)を導入しないままでいると、どうなるか

デジタルトランスフォーメーション(DX) とは、2004年に、当時スウェーデンのウメオ大学教授であったエリック・ストルターマン氏が提唱した「あらゆる面にてデジタル技術が、すべての人々の生活をよりよい方向に変化させる」という考え方を起源に持つ用語です。

2010年代に入るとビジネス業界においても、ICTの進化や普及によって、働き方や商品、サービス開発に大きな変革をもたらすものを指して使われるようになりました。

日本でデジタルトランスフォーメーション(DX)が広く認知されるようになったのは、2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート」です。このレポートが伝えたのは「2025年の崖」と呼ばれる内容で、現状を変えずに放置すれば2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるという衝撃のシナリオでした。

シナリオの詳細は、次のような内容です。

・2015年時点でIT人材は約17万人不足しているが、2025年には約43万人まで拡大する。とくに先端ITならびに古いプログラミング言語を知る人材が大きく不足する。

・2014年にWindows XP、2020年にはWindows 7のサポートが終了。2025年にはSAP ERP(※)のサポートが終了の予定で、数年おきにシステム全体の見なおしが必要となる。放置していれば、既存システムがブラックボックス化し、データ活用ができなくなる。


※SAP ERP:
ERPとは販売、製造、会計管理など企業が扱うシステムをひとつのシステムに統合したもので、Enterprise Resources Planningの略称です。SAP ERPは、ドイツに本社を置くSAP社が、ERPをひとつのソフトウェアアプリケーションとして生み出したERPのパッケージ製品です。なお、SAP社は2020年2月に、ERPのサポート終了時期を2027年に延長すると発表しました。

これらの状況を放置していると、爆発的に増加するデータの活用ができず、デジタル競争についていけなくなるうえ、老朽化したシステムの維持管理コストが高騰するでしょう。また、保守運用人材の不足により、サイバー攻撃や事故、災害によるデータ消失、システムトラブル多発といったリスクも高まります。

経理部門で起こりうるリスクとしては、管理システムの老朽化が進み、故障や不具合によって請求書作成や給与計算など、ただでさえ手間のかかるルーティンワークが煩雑化することが考えられます。ルーティンワークの負担が増えれば、資金調達やコスト削減の提案、キャッシュフローの可視化などの、経営に貢献できる業務に時間を割けなくなるかもしれません。

これは経営的にも大きな問題であり、競合が多いなかで生き残っていくうえでは障害となります。

なかなか進まないデジタルトランスフォーメーション(DX)、企業が抱える課題とは?

さまざまなデメリットがあるとわかっていながらも、思うように進まないデジタルトランスフォーメーション(DX)。理由として考えられる課題は、下記のとおりです。

上層部の認識不足

デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉自体は知っているものの、具体的な内容を認識していない上層部が多いケースです。

一般社団法人日本ビジネスプロセス・マネジメント協会が2019年8月~9月にかけて行った「業務改革実態調査」(注2)によると、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みについて、29.4%の企業が「経営会議など、上層部での重要な経営課題だと認識している」と回答しています。

ほかには20.6%が「話題にはのぼっているが、具体的な取り組みや検討は行っていない」、12.7%が「必要性は感じるが、今のところ話題にのぼることはない」と回答しています。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)が、経営にどのような影響をおよぼすかという質問に対し、26.9%が「自社の事業に与える影響が想定できない」という回答でした。

同調査は部門長クラスを対象に行われましたが、調査結果をみると日本ではまだ、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉だけがひとり歩きしていると推測できます。

続いて経理部門だけにしぼって見てみましょう。一般社団法人日本CFO協会が2019年7月に実施した「経理・財務部門のデジタルトランスフォーメーションに関する実態と課題の調査」(注3)によると、98%が経理部門においてデジタル化の「必要性を感じる」と回答しながらも、実際にデジタル化を進めているのはわずか26%でした。

この結果からは、経理部門でも「DXの必要性は感じているが取り組むまでにはいたらない」といった現状であることがわかります。

IT人材の不足

経済産業省が示した「2025年の崖」でも指摘されるように、IT人材の不足が、多くの企業にとってデジタルトランスフォーメーション(DX)を進められない大きな課題となっています。

業種にもよりますが、自社にIT人材をおかず、管理やメンテナンスのほとんどをベンダーに任せている企業もいます。そのため、革新的な取り組みやITの刷新をしたくても、みずからは手を出せないといった側面があるのです。

これは経理部門でも同様です。管理システムの老朽化が進んでいても、経理部の一存で刷新はできません。「社内で承認を得てから、外部のベンダーに任せる」という手間のかかる状態になってしまう点が、デジタルトランスフォーメーション(DX)における課題でしょう。

「上層部がデジタルトランスフォーメーション(DX)を知ってはいるものの、取り組まないことに対するリスクを正しく把握していない」、「把握していてもIT人材の不足により、すぐに身動きがとれない」という2点が、なかなかデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まない理由ではないかと推測できます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていくために企業がやるべきふたつの解決策

経済産業省が「2025年の崖」を発表してからすでに2年が経過しました。しかし多くの企業では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性を感じつつも、それほど前進してはいません。現状を変え、デジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に取り組むためには何をやるべきなのでしょうか。ふたつの解決策を紹介します。

全社でデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組もうという意識

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2020年5月に「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」(注4)を公表しました。同調査を見ると、デジタルトランスフォーメーション(DX)の成果が出ている企業と、成果が出ていないもしくは取り組んでいない企業では、課題の認識が大きく異なると分かります。

成果が出ている企業が挙げる課題の多くは、「連携先とのWin-Win関係、DX人材の社外からの獲得」といった「社外の話」です。一方、成果が出ていない、または取り組んでいない企業が持つ課題の多くは、「危機感の浸透や変革に対する社内の抵抗、社内人材の育成など」の「社内の話」でした。

デジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に取り組むには、「どういった課題があるのか」を洗い出し、そのうえで「成果を出すにはどの課題を解決するか選ぶ」必要があるといえます。これにより社内での足並みもそろい、デジタルトランスフォーメーション(DX)を効率良く進められるでしょう。

人材採用や人材育成でIT人材を確保

デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていくには、優秀なIT人材が不可欠です。社内に適切な人材がいれば、データが多い経理部門でもシステムの刷新はもちろん、自動化にも迅速に対応でき、より早く効率化を進められるでしょう。

デジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に取り組むためには、「外部から積極的に人材を採用する」「社内で人材を育成する取り組みを始める」などを実施し、IT人材の確保を進める必要があると考えられます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む大きなチャンス

2020年9月、一般社団法人日本経済団体連合会は、デジタルトランスフォーメーション(DX)による行政のデジタル化を掲げました。また同年9月23日、菅首相はデジタル庁創設に向け、基本方針を2020年内にまとめるよう提言したのです。

2021年以降、デジタル庁が先頭に立って企業のデジタル化を進めるための施策を多く出すと予測できます。つまり今が、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む大きなチャンスといえるのです。

まずは社内での意識を共有し、デジタルトランスフォーメーション(DX)への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょう。

出典:
(注1)DX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組み状況|一般社団法人日本能率協会(PDF)
(注2)【231社に調査】DXが進まない理由、7割は「構想」「体制」に課題|ビジネス+IT
(注3)全社DXの落とし穴 ~決算業務のデジタル化で変わる働き方と業務価値~|ブラックライン
(注4)デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査|独立行政法人情報処理推進機構(PDF)

監修者プロフィール

『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部

この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。

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