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経理のスキルアップで新会計基準に対応!経営に役立つ強い経理

デジタル化やRPA(業務自動化)、AI(人工知能)の導入で、経理・財務部門の業務や、働く人に求められる役割は劇的な変化を遂げようとしている。将来的にロボットやAIに代替される職種のひとつにも挙げられ、「仕事がなくなるのでは?」と不安を感じる人も少なくない。そこで今回は、経営陣に求められる強い経理に必要なスキルと考え方を見ていこう。

経理のスキルアップで新会計基準に対応!経営に役立つ強い経理

最終更新日:2020年3月4日

目次

経営に役立つ経理の役割・スキルとは

経理・財務部門の役割は大きく4つに分けられる(図参照)。

その中で「スコアキーパー」といわれる日々の記帳や請求、決算などの業務では、すでに自動化や電子化が進行しており、今後も加速していくだろう。

しかし、これで経理の仕事が減ると考えるのは早計だ。スコアキーパーとしての作業は自動化される一方で、グローバル化の進展やビジネス環境が常に変わり続ける状況下では、経理・財務部門に求められる役割はむしろ増大している。それが、財務面から企業を俯瞰する専門家の立場で経営陣に助言し、意思決定にも参画する「ビジネスパートナー」としての役割だ。

すでに「経営判断に必要なデータは月次決算として毎月報告している」という人もいるだろう。しかし、公認会計士で会計とITの知識を活かし、企業研修やセミナー講師も多数行っているブライトワイズコンサルティング代表の金子智朗氏は、「果たして本当に、経営層の役に立っているのか」と問題提起する。

「月次決算を見ても『経営判断の役に立たない』『経営の実態が見えてこない』と話す経営者は多い。専門知識がないと作れない書類ではありますが、意思決定の助けになっていなければ結果的に価値を生んでいないことになります」

金子氏は、経理部門の業務とそこから生じる付加価値は「スマイルカーブ」で説明できると指摘する(図参照)。

【 製造業と会計業務のスマイルカーブ 】

スマイルカーブとは、ある製造業が自社の付加価値の源泉を分析した際に得られた結果だ。それが示すのは、最も製造業らしい加工・組立というプロセスが最も付加価値が低く、高い付加価値を生み出しているのは、上流の企画開発と下流の製品活用・プロモーションなどのプロセスという事実だ。この傾向は会計業務でも同様で、最も会計らしい仕事と考えられている日々の記帳や決算業務が、最も価値を生んでいないと金子氏は指摘する。

「高い価値を生んでいるのは、上流である会計方針の策定や内部統制の整備と、下流で意思決定を支援する管理会計です。単純作業しかできない経理部門は早急に、スマイルカーブの両端のプロセスを担えるよう対策を考える必要があります」

経理・財務が備える「2021年問題」

金子氏は、この傾向は今後ますます進むと予想する。その背景のひとつに、2021年4月開始の事業年度から、新たな収益認識に関する会計基準が、法定監査義務のある企業に強制適用になることが挙げられるという。これはIFRS(国際会計基準)の収益認識基準に準じる改正だ。

「新しい売上高計上基準が設けられると理解している人が多いのですが、それだけではありません。細かいルールが定められた従来の『細則主義』から、本質的な理解と主体性を求められる『原則主義』への転換も本格的に始まると考えるべきです」

IFRSは、商慣習が異なる世界中の国で使われることを想定しているので、原理原則だけを定めて、具体的な会計方針の策定は各企業に委ねるという立場を取っている。そのため、会計処理等が企業や個別の事例によって異なることもあり得る。「抽象的な表現が多く、具体例もあまりないので、自社に適した会計方針を自ら判断し、決めていくことが求められます。自ら判断できる人たちは自由度が上がるという恩恵を受けられますが、ルール通りの『作業』しかできない人たちは自ら仕事を難しくし、最終的には存在意義を失うでしょう」

進行する自動化に加え、経理・財務部門にはこの会計基準の「2021年問題」が立ちはだかる。

方法1 経理・財務が身につけたいソフトスキル

模範解答なき時代の最適なトレーニング法とは

経理・財務部門がより高い価値を生み出す部門へとステップアップするには、どういったスキルが必要なのか。金子氏は業務に直結する「ハードスキル」に加え、あらゆる仕事や生き方にも共通する「ソフトスキル」も重要だと指摘する。

必要なソフトスキルは3つある。そのひとつが「主体性」だ。

「スマイルカーブの上流となる会計方針の策定や内部統制という仕組み作りに加え、下流である管理会計にも唯一の正解はありません。自ら考え、判断する力が求められます」

特に、管理会計は企業の理念、ビジョン、戦略、外部環境、組織のあり方によって変わり得るし、変わらなければならない。

一度作って終わりというものでもない。管理会計とはマネジメントのための会計である。競争力に役立たなければ意味がない。競争力の源泉は人と違うことをやることだ。したがって、管理会計にはオリジナリティが必要であり、それを担うものにはクリエイティビティも求められる。どこか他の会社の真似をしていればいいというものではない。そこには、自ら生み出していく主体性が不可欠だ。

そのために必要な2つ目のソフトスキルが、「論理的思考力」だ。

細則主義の世界で重宝された知識の量は、AIが働く環境では価値を持たない。それよりも原理原則にさかのぼって論理的に考え、その都度適切な判断をする力が必要になる。

さらに、論理的に考えられるだけではなく、それを論理的に説明できなければならない。模範解答のない原則主義の世界ではなおさらだ。

3つ目の必要なソフトスキルは「論理的説明力」だ。さらに、「わかりやすさ」も重要だ。

「経理やITなど専門性の高い部署の人ほど、わかりやすく説明するのが苦手な傾向にあるように思いますが、それでは本当の専門家とは言えません。難しいことをわかりやすく説明できるのが真の専門家です。わかりやすく説明する最大の秘訣は、自身が本質から深く理解していることです。本質を理解していればわかりやすい例え話で説明したり、聞き手に応じて不要な情報を省略する勇気も初めて持てるようになります」

この3つのソフトスキルは、スマイルカーブの上流と下流、双方に共通して生かせる力だ。これらのスキルを養うトレーニングとして、「あらゆることに関して、意味を考える癖をつけて」と金子氏はアドバイスする。

「何がしたい基準なのか、この計算にどんな意味があるのか、趣旨は何なのか。あらゆる物事に対して『要するに何なのか?』ということを常に考えましょう。そうするうちにこれらのスキルが磨かれ、本質的な理解にも近づくはずです」

方法2 経理・財務が身につけたいハードスキル

本質的な理解につながる素養を強化すべし

経理・財務部門担当者が身につけたいハードスキルは3つある。まず「英語」だ。直接、外国人と話す機会が少ないと不要に感じる人もいると思うが、IFRSの原文は英語であり、正しく対応するには英語力は不可欠という。

「公式の日本語訳はありますが、わかりにくかったり誤解を招く表現もあり、正しい理解には必要に応じて原文にあたる必要があります」

さらに、数学的素養も求められると金子氏は指摘する。仕訳や決算だけなら足し算と引き算という算数で済むが、分析的・論理的な分野である管理会計には数学が不可欠だからだ。

「たとえば損益分岐点を求めるのが難しいという声を聞きますが、これは管理会計が分からないのではなく、数学でつまずいていることが多いのです」

会計基準にも数学的な考え方がたくさん入ってきているという。かつては算数で十分だった財務会計にも数学的素養が求められているということだ。本気で価値をもたらす経理パーソンを目指すなら、少なくとも高校1年生程度までの数学を学び直すことを金子氏は勧める。そうでなければ、いつまで経ってもルールや仕組みを作る側には行けないという。

3つ目のハードスキルは、経営的視点だ。経理業務はなにかと杓子定規に陥りがちだが、常に企業価値の向上という視点を忘れてはいけない。

「内部統制でもルールばかり作って満足していては意味がありません。それに何の意義があるのかを大局的に問える視点が必要です」

方法3 システム活用による経理業務軽減

大転換期を乗り越え、高い価値を生み出す部門へ

経理・財務部門として存在価値を高めるには、付加価値の高いスマイルカーブ両端の業務を担うしかないと金子氏は訴える。

「そのためにはまず、スマイルカーブの底にあたる単純作業から解放される必要があります」

優秀な人材が多く配属されているにもかかわらず、単純作業に忙殺されて価値を生み出せない状況は、一刻も早く脱するべきだという。

幸い、日々の仕訳や経費精算、請求書発行や決算などの業務は、IT、高速ネットワーク、それを活用したアウトソーシングやシェアード・サービスで劇的に負担を減らすことが可能だ。RPA、IoT、AIなどはこの傾向をさらに加速する。

スマイルカーブの下流にあたる管理会計業務に関しては、必ずしも経理・財務部門が担う必要はないとする考え方もある。実際、経営企画部門が担う企業も多い。しかし金子氏は、最も適任なのは、経理・財務部門だと言う。管理会計である以上、会計制度に精通する部門にしかできないアドバイスや、その本質まで理解しているからこそ避けられるリスクがあるからだ。

「5年も経てば、経理・財務部門が見る世界は一変するでしょう」と金子氏は言う。

この大転換期を乗りこえ、利益を生み出す経理・財務部門に脱皮できるかどうかは、まさに今、どう行動するかにかかっているのだ。

※本記事は更新日時点の情報に基づいています。法改正などにより情報が変更されている可能性があります。

取材

ブライトワイズコンサルティング合同会社代表社員/公認会計士・税理士 金子 智朗氏

東京大学工学部卒。1991年、日本航空株式会社入社。在職中に公認会計士第2次試験に合格。会計とITの知識を活かし、企業研修やセミナー講師も多数務める。名古屋商科大学大学院会計ファイナンス研究科教授。
https://www.brightwise.jp/ 

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