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事前に知っておきたい。消費税増税と軽減税率制度で求められる経理業務

2018/10/25
経理知識
事前に知っておきたい。消費税増税と軽減税率制度で求められる経理業務

2度にわたり延期されていた消費税の税率引き上げが、2019年10月1日に実施される見込みとなった。今回、過去の増税と異なるのが、増税にともない導入される「軽減税率制度」だ。標準税率は8%から10%に引き上げられるが、「酒類・外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行される新聞」は軽減税率8%の対象になる。対象品目の線引きが難しく、会議費や交際費として飲食料品を購入する場合や、定期購読している新聞などへの対応が必要になり、すべての事業者に関係してくる。

また、帳簿や請求書等の記載は、適用される税率・税額ごとに分ける『区分経理』が義務付けられるため、新たな経理処理も発生する。軽減税率と同時に導入される「区分記載請求書方式」や、2023年から導入される「インボイス制度」だ。税率ごとに区分して税額計算を行う必要が出てくる。

軽減税率制度の実施まで残り1年。この期間に、どのような備えが必要だろうか。企業の経理実務に詳しいHongo Connect & Consulting株式会社の代表取締役社長で税理士の市川琢也氏の話をもとに解説していく。

増税と軽減税率導入の背景

消費税増税と軽減税率制度導入の理由消費税は、2015年10月に税率10%へ引き上げられる予定だったが、個人消費の低迷などを理由に2017年4月に延期。その後も、デフレ脱却が思うように進まなかったことから、さらに2019年10月へと再延期された。社会保障と税の一体改革を掲げる国の方針により、引き上げは予定どおり行われることが、先日表明されている。増税と同時に実施される軽減税率は、低所得者に配慮する観点から、食料品などの生活必需品に対する税率を軽減する制度だ。欧米諸国でも同様の税が導入されている。

軽減税率の対象

軽減税率の対象は飲食料品と新聞。外食は対象外なので注意飲食料品と新聞に適用される軽減税率だが、一律8%に軽減されるわけではない。対象となる「飲食料品」は食品表示法に規定する食品をいい、酒税法に規定される「酒類」は軽減税率の対象ではない。また、「外食」や「ケータリング」も対象外だ。軽減税率の対象について、詳しくみていこう。

軽減税率の対象となる飲食料品の範囲

Point1 飲食をさせる「サービスの提供があるかどうか」が税率の線引きに「飲食をさせるサービスの提供」がある「外食」や「ケータリング」は標準税率になる。「外食」とは、制度上は「食品衛生法上の飲食店・喫茶店・その他の食事の提供を行う事業者が、飲食設備(テーブル、椅子、カウンターなど)のある場所等において行う調理や盛り付け、配膳といった食事の提供(サービス)」のことをさす。食事に必要な設備等もサービスの提供に含まれ、標準税率10%の対象となる。

ケータリングや出張料理などの、指定された場所での食事の提供もサービスの提供となるため、標準税率となる(老人ホームなどでの提供など一部を除く)。そのほか、ショッピングモールなどのフードコートや企業内の社員食堂なども、場所と食事を提供しているとみなされ、標準税率が適用される。

Point2 「飲食料品の譲渡」が軽減税率の対象。会計時の意思確認が必要になることも一方、商品をテイクアウトのために容器に入れたり、包装して販売した場合は「飲食料品の譲渡」となり軽減税率8%が適用される。ファストフード店やコーヒーショップといった店内に飲食スペースがある飲食店・小売店などでは、イートインの場合は標準税率、テイクアウトの場合は軽減税率と、価格に違いがでてくる。税率は会計時に確定するため、会計時に持ち帰りか店内飲食かの意思確認が必要になる。

なお、会計後に持ち帰りから店内飲食に切り替えた場合でも、2%分を店から請求したり客から支払う必要はない。会計後に店内飲食から持ち帰りに切り替えた場合も同様だ。

■軽減税率と標準税率適用の例 軽減税率と標準税率適用の例

Point3 酒税法上の「酒類」は小売、外食にかかわらず10%標準税率が適用される「酒類」とは、酒税法の規定に該当するものが対象となる。ビール、日本酒、ワインといったアルコール飲料全般と、「みりん」などだ。一方で「料理酒」や「みりん風調味料」は酒税法上は酒類ではない。また、「甘酒」、「ノンアルコールビール」といったアルコール度数1%未満の飲料はソフトドリンクとして扱われ、軽減税率が適用される。

Point4 コーヒー豆+カップ、玩具付き菓子などの「一体資産」は、原価の割合で判断玩具つき菓子やカップとコーヒー豆のセットなど、食品と食品以外の資産があらかじめ一体(セット)となっている商品(一体資産)は、原則として標準税率の対象だ。ただし、税抜の金額が1万円以下で、かつ原価のうち食品が占める割合が2/3以上の場合は、軽減税率の対象となる。

Point5 BtoB取引は、最終の販売方法を問わず軽減税率が適用される食品メーカーや食品卸が、飲食店や小売に食材・食品を販売する場合は、「飲食料品の譲渡」となるため、軽減税率が適用される(酒類と一体資産の一部を除く)。販売先が「外食」を提供するかどうかは関係ない。

■飲食料品取引の税率の違い(酒類・一体資産の一部を除く) 飲食料品取引の税率の違い(酒類・一体資産の一部を除く)

軽減税率で必要な対応

事前に確認したい2つのポイント増税と軽減税率の実施までの準備期間は1年。今からできる対応、やっておくべき事はをまとめた。直前になって慌てないためにも、事前に確認をしておきたい。

Point1 対象商品の洗い出し自社で仕入れている商品、販売している商品が、軽減税率の対象か対象でないかをておく必要がある。

単一の消費税率であれば、請求書等をもとに仕入の控除税額を計算することができたが、複数税率の場合は、適用税率ごとの支払額がわからなければ計算できない。軽減税率実施後は、税率・税額ごとの経理処理が求められる(Point2で詳述)ため、事前に対象商品の洗い出しは必須だ。可能であれば、対象商品に「※」や「★」などの印をつけるといった対応も進めておきたい。また、会計ソフトなどへの入力ルールも決めておきたいところだ。

特に取扱量が多い商品や取引量が多い仕入先の場合、万一間違っていると実際の納税額との違いが大きくなる。優先的に確認をしておきたい。

どちらの税率が適応されるのかあいまいなものがあれば、税理士など専門家から指導をうけることも考えてほしい。

Point2 請求書の様式の変更軽減税率制度実施後は、仕入税額控除の要件も現在の「請求書等保存方式」から変更される。実施から4年間は「区分記載請求書等保存方式」となり、対象品目ごとに税率・税額を区分した記載事項などが新たに必要となる。2023年からは「インボイス制度」と呼ばれる「適格請求書等保存方式」が導入される。

■請求書の様式と記載項目 請求書の様式と記載項目

インボイス制度の導入にあたって創設される「適格請求書発行事業者登録制度」に基づき、売り手となる課税事業者は、税務署へ適格請求書発行事業者の申請・登録が求められることになる。事業者登録なしに「適格請求書」を発行することはできない。申請から登録まで時間がかかることも考えられるので、適格請求書に対応したフォーマットに変更するなど事前の準備をしたうえで、早めの申請がのぞましいだろう。申請書はインボイス制度実施の2年前である2021年10月1日から提出することができる。

■請求書の様式の変更箇所とスケジュール 請求書の様式の変更箇所とスケジュール

適格請求書は内容そのものは区分記載請求書と大きく変わらない。軽減税率実施後から、請求書等の様式をインボイス制度導入を意識したものに変更しておくのも一つの方法だ。

経営への影響

消費税増税前の駆け込み需要と、納税時の税負担増への対応前回2014年4月の増税時には、大変な思いをした経理部門も多かったのではないだろうか。今回の増税のタイミングでも、直前の駆け込み需要で、取引自体も増えるため経理処理の作業量は増加することが予測される。事前の準備をしておくことで、急激な作業の増加にも対応できる体制を整えておきたい。

また、増税に伴い、納税額が増加される点にも注意が必要だ。消費税が8%から10%へ引き上げられることで、納税額は1.25倍に増加する。納税時に困らないように、納税資金の確保に留意したい。

増税・軽減税率導入まであと1年。情報収集でしっかりとした備えを日本での軽減税率の導入は初めてのため、導入前後の混乱が予想されている。取引の際の経理処理や取引先からの問い合わせなど、膨大な作業になる可能性もある。

軽減税率やインボイス制度は、実際に運用が開始されないとわからない部分も多く、実施後に通達が出て変わっていくところもあるだろう。導入に備えて情報収集につとめていきたい。

消費税増税・軽減税率制度が実施される2019年10月まであと1年。実施前後の混乱を避けるためにも、今のうちに準備を進めておきたい。

※本記事は更新日時点の情報に基づいています。法改正などにより情報が変更されている可能性があります。

本コラムの著者プロフィール

辻・本郷 税理士法人 市川琢也

市川 琢也

辻・本郷 税理士法人にて税理士業務、経理アウトソーシング、業務改善コンサルなどを担当し、延べ1,000社以上に関与。現在はHongo Connect & Consulting株式会社の社長として、様々な事業を“つなげる”ビジネスに取り組む。

Hongo Connect & Consulting 株式会社
辻・本郷税理士法人グループが誇る、顧問先企業数10,000社を超える豊富な経験とネットワークを活かし、様々な角度から経理・総務業務の改善・コンサルティングを行う。

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