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デジタル時代の経理・財務パーソン~スコアキーパーからビジネスパートナーへ

2019/09/05
経理知識
デジタル時代の経理・財務パーソン①~求められる役割の変化

ERP(基幹システム)やAI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などで、さまざまな業務がデジタル化、自動化されつつある。もちろん経理・財務部門も例外はなく、紙の書類を手で入力する、目検によるチェックなどの作業が、徐々に人の手を離れてきている。今回は、ITによって業務のデジタル化が進むなか、経理・財務部門の担当者はどうしていくべきかを、日本CFO協会主任研究委員の解説で紹介する。

アンケートから読み解く経理・財務部門が抱える課題

ビジネスを取り巻く環境が激変する中、企業の経理・財務部門はどのような問題に直面しているのか。本誌編集部が現役経理パーソンと管理職1725人を対象に実施したアンケートでは、求められる役割の変化を感じる人が多いことがわかった。

『経理が本来担うべき役割は』との質問に対し、会計処理などの基本業務と答えた人は3割に満たず、データ分析に基づく戦略立案や安定経営の補佐など、専門性を生かした業務をすべきとの声が多く寄せられた。

【 アンケート 】 経理・財務部門が本来担うべき役割は何だと思いますか?


【 アンケート 】 経理・財務部門が本来担うべき役割は何だと思いますか?
この結果に対し、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングの山岡正房氏が分析する。

「経理・財務部門はより高度化していくべきという考えは多くの人が持っているのですが、現実に自分自身の話になると現状維持にこだわる人が少なからずいます。今の業務に責任を感じているという背景もあるのでしょうが、経理・財務に求められる役割の変化を『自分ごと』としてとらえていないとも考えられます」

山岡 正房 氏

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
アソシエートパートナー

山岡 正房 氏

米国ソフトウェア企業の日本法人を経て、1999年に日本アーンストアンドヤングコンサルティング(当時)に入社。財務・会計コンサルティングやERP導入支援など多くのプロジェクトをリードした後、2014年より現職。デジタル技術を活用したCFO部門の変革をテーマに活躍している。

一方、日本CFO協会主任研究委員/株式会社アカウンティング アドバイザリーの櫻田修一氏は、「40~50代のミドルマネジメント層の中には、このまま逃げ切れると楽観視する方もいらっしゃいます。しかしこうした考えは、これからは通用しないのではないか」と、より厳しい指摘をする。

櫻田 修一 氏

一般社団法人日本CFO協会 主任研究委員
デジタルテクノロジー部会幹事
株式会社アカウンティング アドバイザリー
マネージングディレクター/公認会計士

櫻田 修一 氏

世界5大会計事務所の一角だったアーサー・アンダーセンで監査や経営管理コンサルティング、システム導入支援に従事。2010年にアカウンティング アドバイザリーを創業メンバーとして設立、マネージングディレクターに就任。IFRS導入支援やシステム導入支援を手がける。

デジタル時代の経理・財務のあり方

経理・財務は企業の中でも、IT処理によるデジタル化で省力化効果が高い部門のひとつとしてよく挙げられ、今後、仕事の多くがテクノロジーに取って代わられるともいわれる。

「デジタル化により、経理・財務担当者は業務の多くを占めていたルーティンの単純作業から解放され、より付加価値の高い仕事が求められるようになります。デジタル化は企業の生き残り策という観点からも、避けては通れない道と考えるべきです」(櫻田氏)

【 経理・財務部門のデジタル化 】経理・財務部門のデジタル化は以下に分解できる

経理・財務部門のデジタル化
従来型の非効率的な業務スタイルを省力化するために、既存のパッケージアプリケーションやクラウドサービスに業務を合わせていくのが効果的だと櫻田氏は指摘する。

例えば、経費精算や請求書の電子化などは、自社で開発するのではなく、既存のクラウドサービス等を活用し業務をそこに合わせていく。それにより、独自ルールのような非効率な部分をなくすことができる。そして残った業務のうち入力や繰り返し業務などの定型的な業務にRPA(業務自動化)を導入するのがよいという。

RPAのほか、リアルタイムの現状把握が可能になる次世代ERP(基幹システム)も、すでに多くの企業が導入を進めている。

【 BtoB取引のデジタル化 】
BtoB取引のデジタル化の主要パターンは以下のとおりである。

BtoB取引のデジタル化
今後はAI(機械学習)やブロックチェーン技術も活用され、全社的なリスクマネジメントなどのより高度な仕事も自動化されていくと予想される。

「将来的に人が担うのは、ファイナンス部門のオペレーション変革、大量データ解析による洞察の提供、グループ全体のリスク管理、経営上の意思決定へのコミットなど、より専門性の高い業務に絞られていくでしょう」(山岡氏)

経理・財務に求められるこれからの役割・機能

経理・財務部門の役割と機能は、大きく4つに分類される。

【4つの役割と機能】

コメンテーター
会社経営の方向性や現状の分析について、数字を使って説明する。
トップマネジメントから求められた経理・財務的観点からの要求に応える。
(意思決定支援の情報提供)
ビジネスパートナー
計数面・財務面において、ビジネス視点・経営視点から能動的に事業側へ情報発信や助言を行い、事業側の意思決定に参画する。
企業価値の向上に対してコミットメントを持って、経営課題の解消に事業側と共に取り組む。
スコアキーパー
取引を正しく処理し、記帳する。
月次等の定期報告を正しく作成する。
四半期・年度の外部報告資料を正しく作成する。
カストディアン
関連法令や会計基準への準拠・遵守(コンプライアンス)に責任を持ち、必要なモニタリング、運用を行う。
会社のガバナンスをリードする。資産価値の保全責任を持つ。

このうち、従来からの中心業務である日々の記帳や決算などは、「スコアキーパー」だ。すでに自動化は始まっているが、今後さらに加速していくと考えられる。一方、財務面から現状を分析し、経営陣に情報提供するのが「コメンテーター」。企業ガバナンスやリスク管理を指揮するのが「カストディアン」だ。

そして、今後の経理・財務部門が最も強化していくべき機能が、「ビジネスパートナー」だ。一般に「付加価値業務」といわれている領域である。企業全体を俯瞰する経理・財務の専門家の立場から経営陣やリーダーに助言するとともに、経営意思決定にも参画する。

グローバル化の進展やビジネス環境が急変する中で、ビジネスパートナーに求められる役割は拡大している。自動化でスコアキーパーの人員に余剰が生じた際、ビジネスパートナーにスキルチェンジを促し、リソースを移していくのが合理的だ。

スコアキーパーからの脱却を目指す、経理部門の方へ

従来の役割・機能
取引を正確に記帳し、決算資料を作成するスコアキーパー機能が中心で、マンパワーもここに集中する。カストディアンやコメンテーターとしての役割も担うが、ビジネスパートナーの機能を持つ組織は多くはない。
これからの役割・機能
スコアキーパーの主な機能は自動化が進み、必要なマンパワーは減少。その一方で、目まぐるしく変化するビジネス環境に対応するためのビジネスパートナーの役割は増大。スコアキーパーからのシフトチェンジが課題に。

今後はカストディアンとコメンテーター業務の一部も、自動化されると山岡氏は予想する。

「どの役割にも単純作業や、システムが得意とする作業が多くあり、こうした業務はいずれ自動化されると考えられます。それでも、人が不要になることはありません。デジタル技術を活用した業務効率化を推進したり、データを意思決定に活用するためのシミュレーションモデルを構築したり、グループガバナンスを強化するような高度な業務は、人が担う必要があるからです」

いずれの機能でも、人に残される役割には高い専門性が求められる。

4つの役割と機能を詳しく解説

【スコアキーパー】実作業を担うシステムを構築・管理

日々の取引を正しく処理・記帳し、決算資料を作成する業務で、従来から経理・財務部門に求められてきた最も基本的な役割がスコアキーパーだ。財務諸表などの開示資料に加え、月次決算などの内部報告資料や税務申告、会計監査対応も含まれる。これらの業務の多くはすでに自動化が進んでいるが、将来的にも相当数の余剰人員を生む可能性が指摘される。

スコアキーパーの多くはビジネスパートナーへのスキルチェンジが求められる。それでも、スコアキーパーとして残る人材は必要であり、今後の役割は、会計とIT双方の知見を持つ専門家として、実作業を担うシステム構築を指揮したり、R P A等各関連システムの品質管理を担う立場になると考えられる。

【カストディアン】リスク管理やガバナンスの責任者

企業のガバナンスを指揮し、コンプライアンスや内部統制上の問題が生じていないかを監視する役割がカストディアンだ。リスクマネジメントを徹底し、企業価値や資産価値を保全する責任を持つ。言うなれば、ビジネスパートナーとカストディアンは、アクセルとブレーキのような関係となる。企業規模が大きくなるほど、人の目による監視は難しくなるため、今後はカストディアンにも自動化の必要性が高まることが予測される。

例としては、グループ企業のデータを収集し、不正を自動検知するようなシステムが考えられる。またグループ全体の財務リスクのエクスポージャーの適時把握にもITシステムが活用されることになる。

【コメンテーター】意思決定に必要な情報を提供

自社の財務状況を分析し、経営の方向性や現状分析、意思決定に必要な情報を提供する役割を持つ。予算や業績の管理、リスク評価やM&Aにおける財務アドバイザーといった機能もコメンテーターにあたる。経理・財務に限らず、経営企画部門がその役割を担うことも多い。ただし、実績把握や予算実績差異の原因分析、レポート作成などの仕事は、近い将来、自動化されると考えられる。

今後のコメンテーターに求められるのは、データの専門家として財務やマーケットのデータを収集して多様な視点から分析し、仮説を立てシミュレーションモデルの提案までを担えるスキルだともいえる。

【ビジネスパートナー】財務の専門家として意思決定に参画

経理・財務面で企業全体を俯瞰する専門家の立場から、社会・環境問題や市場動向など外部環境の分析に基づくアドバイスを行い、経営意思決定に参画していく役割だ。知見の提供だけでなく、会計データという根拠を用い意思決定にかかわる。

自社ビジネスへの深い理解に加え、ファイナンスに関する高度なリテラシーと戦略的な思考が必要。また、新規事業のアイデアを事業化する際も重要な役割を果たす。経営陣は新しい分野のアイデアはあっても、事業化するノウハウを持っていないことがあり、ファイナンスの専門家であるビジネスパートナーが組織を再構成し、投資金額の決定や事業運営の枠組みの構築をリードすることが期待される。

階層によって変化する4つの役割と機能

経理・財務部門が担う4領域の機能すべてにおいて、今後は単純作業が自動化され、人材が担う業務は高度化していく。そうなると、経理・財務は経験豊富な少数のハイスキル人材だけのポストとなり、そうでない人材は、はじき出されるイメージを持つ人もいる。山岡氏はこれを「よくある誤解」と指摘する。

「若手から部長クラスまで、幅広い階層で人材は必要です。例えばビジネスパートナーは数字を武器に経営意思決定に介在しますが、現場レベルでの意思決定も含まれます。例としては、製品の売れ行きと生産コストを秤にかけ、限界利益最大化のために販売・在庫・生産の計画調整の意思決定に介在するケースなどが挙げられます」

【 階層ごとの役割と機能 】
階層ごとの役割と機能

ビジネスパートナーは経営に近い存在で、スコアキーパーが末端のような解釈も生まれやすいが、それも誤解だという。今の数字を出すだけのスコアキーパーではなく、企業内外にどのようなデータが存在しているかを把握し、それを経営に活用・分析するといったデータの専門家としての役割を担うポテンシャルがある。

また、櫻田氏は事業部門でも、経理・財務スキルを持つ人材は必要になると説く。

「例えば購買が半年前に決まるのであれば、今の購買を見れば半年後の仕入コストが予測できる。環境やマーケットの変化が激しい現在、こうした先行指標などの各種データの活用や将来予測に基づく複数の事業シナリオの検討などが重要となり、ビジネスパートナーとしてのスキルはあらゆる部門で貢献できると言えます」

ビジネスパートナーの機能

1 イノベーションの事業化とKPIの展開
イチ早くお金に換える仕組みを構築し組織目標:KPIを展開
財務指標⇒ 先行指標へ

2 将来予測・事業ストーリー
過去分析から予測重視へシフトし、将来シナリオを確定

3 バリューチェーンの外部・内部情報の収集蓄積
事業部門と共にマーケット・顧客の情報と企業内部の情報を収集・整理・蓄積

【 ビジネスパートナーの将来予測:購買の例 】

ビジネスパートナーの将来予測:購買の例

変わるために、今やるべきこと 

業務の一部が自動化されても、グローバル化や外部環境の変化により、経理・財務部門が対応を求められる役割はむしろ増える傾向にある。ファイナンスの観点から企業価値の向上を後押しし、リスクを適切にコントロールできる組織へと成長するため、経理・財務のリーダーとスタッフはどう行動していくべきなのだろうか。櫻田氏は、第一にリーダーの意識改革が必須であると説く。

「決算数値を作る組織から、企業価値向上をリードする組織へ変えていこうとするのですから、リーダーが危機感と覚悟を持って役割を変えるべく、業務プロセスを整理し、組織改革と人材育成に取り組むことは不可欠です。

特に、スコアキーパーとして経理・財務の基礎を身に付けた人材を、どのようにビジネスパートナーへと育成していくかは、今後の経理・財務部門が直面する最も大きな課題のひとつです。上層部はそのための、明確なキャリアパスを設定することも求められてきます」

一例としては、データの専門家としてのコメンテーターやカストディアンの役割のほか、事業部やマーケティングなども経験させることで、多様な視点から自社ビジネスを俯瞰し、分析できるスキルを磨くようなキャリアパスが考えられる。こうした意味では、日本企業のジョブローテーションのしくみは、ビジネスパートナーを育成する土台になり得ると山岡氏は言う。

当然、一人ひとりのスタッフにも、自らが進むべきキャリアを描くとともに、実現に向けた行動が求められる。

「業務の自動化や働き方改革で残業が減ったなら、浮いた時間をスキルアップに使いたい」(山岡氏)

スコアキーパーに残るならIT、コメンテーターならデータ分析の専門性を高めたい。ビジネスパートナーにはステークホルダーの利害を調整し、合意形成に導く人間力も求められる。会計の専門家として公認会計士や税理士に匹敵するスキルを身に付けたり、データ分析のための機械学習の知識を得るといったことも有望だと櫻田氏は言う。

今後も、経理・財務の仕事自体がなくなることはない。将来も価値を生み出せる人材と組織であり続けるため、常に視野を広く持つことが求められる。

※本記事は更新日時点の情報に基づいています。法改正などにより情報が変更されている可能性があります。

本コラムの監修

本コラムの監修

一般社団法人日本CFO 協会

「市場・社会対応型の経営モデルをリードするCFOを育て、日本における企業経営のグローバルスタンダードを確立する」をミッションに掲げ、経営・財務に関する最先端の概念・手法を調査・研究し、CFOの育成に努めると共に、CFO機能強化のための支援活動を行う。

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社

世界5大会計事務所であるアーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドの日本におけるメンバーファーム。クライアントの業績向上に向け、長期的な取り組みを提案する。

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